前回は、樹と陽向のデートの別れ際、陽向が車に轢かれて(ぶつかって?)、陽向が倒れて、真っ黒なページに呆然とした樹の顔と、樹の「陽向」ってセリフだけが置かれてるってとこで終わり。
✓今回の見どころ(読みどころ)
・陽向の事故で、姉がいなくなったときのことを思い出した樹
・樹から「離れたい」と言われた陽向
カモナ マイハウス!18話/南波あつこ/別冊フレンド2021年7月号
あらすじ
頭3針縫ったものの、軽傷ですんだ陽向。
陽向の処置中、樹は姉が病院に運ばれたときのことを思い出していた。
後日、病院で樹の様子がおかしかったこと、LINEの返信もろくにないことを気にして、陽向は樹の家をたずねる。
そこで樹は日向を家の中に招き、2人きりという状況にドキドキしながら家にあがる陽向。
2人で映画を観たあと、イイ感じになり、陽向から樹にキスをして「いっくんにだったら何されてもやじゃないくらいにはいっくんのこと大好き」と伝えると、樹は日向を抱きしめて―――?
感想
え、なんかもうめっちゃツラい回だったんですけど。
陽向が樹に別れを告げられるんだけど、陽向も樹も、どっちも悪くない。
樹にあるのは「恐怖」よね。大事な人(=前は姉。今は陽向)を再び失う恐怖。
「今以上に大事な人間になってほしくない」って言ったのも、今ですら陽向を失ったら「立っていられない」ほどなのに、今以上に陽向が大事になって陽向を失ったらそれ以上のダメージがあるからってことよね。
陽向は陽向で、「いっくん(樹)を守るって言ったのに、彼につらい思いをさせてるのは私なんだ」って引きとめられない。樹から離れたくない、そばにいたいって言うのは樹を苦しめることになるから。
わぁ…誰も悪くない切ない…って最初読んだときは思ったんだけど、2回目読んだときに違和感というか疑問というか。
樹が言ってる「陽向がいなくなったら」ってのは、イコール死んだらってことで、自分の隣にいなくてもとにかく生きててくれればいいってことだと思うのね。
…いや、ちがうな。「生きててくれればいい」じゃなくて、大事な人を失くす(=死ぬ)喪失感とか絶望感とかをもう二度と味わいたくない、だから「大事な人」という存在自体を作らない、ってことだね。
「大事な人がまたいなくなる(=死ぬ)ことが怖い」から、陽向から離れる、この家も出るって結論が「え、それ意味ある?」って思ったわ。
流れもわかるし、言いたいこともわかるんだけど、だってもう既に陽向は樹にとっての「大事な人」になってしまっているし、今陽向と別れて二度と会えなくなったら、それは相手が死んだ場合に「もう会えない」っていう状況は一緒じゃん。
死に別れと生き別れは気持ちのうえでは全然違うけど、「大事な人がいなくなるのが怖い」って思いの強い人が、既に大事な人である陽向を自ら手放すってのが「え、なんで?」ってなった。
その結論になるなら、陽向が「大事な人」になる前に離れとけよって。
樹の正体が魔物とかモンスターとかで、陽向の生気を吸収して生きていて、樹と一緒にいると陽向の寿命が縮まってしまう。陽向に生きていてほしい樹は、離れることを決意する、とかっていう理由ならわかるんだけど、樹と離れたところで陽向の生き死にに関係ないし。
「樹と離れたところで陽向の生き死にに関係ない」のに、「大事な人をなくすのが怖い」っつって陽向から離れるって、「樹が知らないところで陽向が死んだとして、それを知らないでいられればいいってこと?」って思っちゃうわ。
結局、樹は自分一番なんですよ。自分がツラい思いをしたくないから、自分が傷つきたくないから、陽向と離れるって結論に至ったんですよ。
いや、全然悪くないよ。自分を大事にすることは大事だし、自分本位に生きていいよ。
ただ、少女漫画のヒーローって、大体ヒロインのためを思って動くし、ヒロインを傷つけることがあっても、それは結局ヒロインを思っての行動だったってことがほとんどだから、少女漫画のヒーローとしては珍しいタイプだなと思う。
またこれ、樹の目の前で陽向が轢かれたってことも影響大きかっただろうな。「そばにいたのにごめん」って陽向に言ってたし。
ちょっとどうでもいいんだけど、お姉さんの事故のときの樹の回想で、看護師さんが「ご遺体の損傷が激しいのでお会いにならないほうがよいかと思います」って言ってて、「見ないほうがいい」じゃなくて「会わないほうがいい」って言ってるの、言葉の配慮だなと思いました。
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