美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~/藤森 治見(ふじもり はるみ)
昭和20年、「顔が醜い」という理由だけで女学校でひどいイジメを受けていたハナ。
ソ連軍の空襲から逃れるため、樺太から北海道への引き揚げ船へ乗り込んだところ、いじめグループによってハナたち家族は追い出されてしまう。翌日の船に乗ることができたが、この船が本土目前で撃沈されてしまい、ハナの家族は死亡。ハナだけが生き残る。
ハナは復讐を決意し、整形して美しい顔を手に入れ別人となり、自分をいじめたメンバーに復讐を果たしていく。
そんなハナの復讐相手がどんな末路をたどったのか、まとめました。
内海敏恵(うつみとしえ)
女学校時代、ミミズを食べさせたり率先してハナをいじめていた。
女学校卒業後、北海道川上町の大塚旅館の跡取りと結婚し、若女将となる。
夫の辰雄が、駅で知り合ったという小石川菜穂子(整形後のハナ)を旅館の住み込みとして雇う。美人で働き者と評判の菜穂子に嫉妬し、イライラしながら過ごしていたところ、菜穂子(=ハナ)の策略にまんまとはまっていき、自らの評判を落としていく。
菜穂子(=ハナ)を旅館から追い出すため、客の貴重品を菜穂子の部屋に仕込もうとしたところ、それを菜穂子に見つかってしまい、「なんでいるのよ!」と理不尽に自分で騒ぎたて、人が集まったところで自分の着物から客の財布が落ちて、その場で夫に「出ていけ」と言われる。
呆然としている中、野次馬の中にハナの顔を見つけて錯乱状態になり、外に飛び出して階段から転がり落ち、一命はとりとめたものの、「二度と療養院から出られない」と言われるほど顔に深い傷を負う(ここまで第1話)。
ハナへの復讐に燃え、ブラックジャックよりもひどいつぎはぎだらけの顔で再登場(第5話の最後)。
菜穂子(=ハナ)を追うため、菜穂子(=ハナ)が働いていたカフェでマスターに菜穂子(=ハナ)の行方を聞くが、「教えられない」という答えに逆上し、マスターを刺し殺してしまう(第10話)。
ハナへ復讐するためにサチに協力を求める。その際、サチの居場所をサチの祖母がなかなか吐かなかったという理由でサチの祖母を殺害している(第13話)。
小倉百子(おぐらももこ)
女学校時代、絢子や敏恵に言われるがままハナをいじめ(「言われるがまま」ではあるが嫌がってはいない。むしろ楽しんでいる)、卒業後には、ハナをいじめていたことをすっかり忘れている。
樺太からの引き揚げ後、祖父母の農場がある北海道別海町に両親共に移り住み、農業の手伝いをさせられる。「こんな生活抜け出したい」と日々思っているところに結婚の話が舞い込み、「結婚すれば楽な暮らしができる」と浮足立つが、結婚相手が控えめに言っても不細工で気持ち悪い男(初対面で「子どもいっぱい作ろうね」って言われる)だったため、絶望。
「人生終わった」と過ごす中、1人で農作業をしていたある日、杏一郎という超イケメンに出会い、一瞬で恋に落ちる。
意気投合した2人はしばらく日々を過ごし、百子は杏一郎からのプロポーズを受け、その夜に「本当の夫婦」になるが、朝目覚めた百子の隣にいたのは、杏一郎ではなく、結婚の話があった不細工で気持ち悪い男だった。
百子は、百子自身の借金(おそらく、杏一郎が百子にあげた服や宝石の費用)のカタに見世に売られていた。愛した杏一郎に裏切られ、何人もの男に体を売ることになり、百子の心は壊れてしまった(ここまで第2話)。
杏一郎はなんだったのかというと、ハナを整形した医者の助手、菊乃の男装した姿。
菊乃は元男性の軍人で、今で言う性同一性障害?だったため、除隊後に先生の手術を受け、女性になった。その後、手術をした先生の助手をしている。ハナのことを気にかけていて、ハナの復讐に手を貸している。
第10話で、百子はブラウン管から出てきた貞子のような姿で再登場。いや、貞子の方がまだ可愛い。ミイラが着物着ました、みたいな姿で登場。取材に訪れた綿貫を「杏一郎」だと思い込み、迫りくる。百子の祖母によると、若い男を見るとこうなるらしい(第10話)。
奥田スミ子(おくだすみこ)
女学校時代、他のメンバーに「やりすぎ」と言われるほどハナをいじめていた。
引き揚げ後、家族で漁師町の伯父の元に身を寄せたが、貧しい暮らしが嫌で1人で函館へ渡り、カフェのウェイトレスをしている。
自分が美人であることを自覚し、美しいことは”特別”なのだと思っている。新しく入った菜穂子(=ハナ)のことも、美しいということで認めている。
毎日届くスミ子自身の行動が書かれているストーカーの恋文に悩まされ、その犯人がカフェに来る醜男・中川ではないかと疑い、自分の取り巻きに中川を襲わせ、ボロボロになった中川に「気持ち悪い」と吐き捨てる。
その後、店から出たところを待ち伏せていた中川に硫酸をかけられ、顔が焼けただれて医者には元には戻らないと言われてしまう。
見舞いに来たカフェの常連客で新聞記者の綿貫に、例のストーカーの恋文を送ったのは中川ではない、女性の筆跡だという報告を受ける。
顔が戻らないという絶望の中、病室の窓から外を見ている時にハナの姿を見つけ、「自分がこうなったのはハナの復讐のせいなのね」と怒りに燃え、ハナを追いかけている途中で車にはねられ、死亡(第3話)。
瀬尾サチ(せおさち)
女学校時代、試験の順位でハナに負け、「ハナに会うまでは自分が1番だったのに」とハナを恨み、積極的にハナのイジメに加わる。
引き揚げ後、父親が事業の失敗で多額の負債を抱えて蒸発、母親は心を病んで自殺。親の借金を返すために身体を売り、父親がわからない子を身ごもり、出産。小さな息子を旭川の祖母へ預け、職探しをしている途中、札幌で偶然絢子(ハナをいじめていたグループのリーダー格)と再会し、絢子の家に雇われる。
が、仕事は絢子の夫・白井の”人形”となって変態プレイに付き合わされることだった。絢子の「報酬は3倍」の言葉に嫌々ながら白井の人形となり、お金を手にする。
お金を手に、祖母と息子の元へ向かう途中、血まみれの息子のセーターを手にするハナに出会い、追いかけている内にハナに後ろから襲われ、気絶。
目を覚ますと森の中にいて、ハナが指差す方向には沼に浮かぶ息子の姿が。パニックになりながら沼に飛び込むと、息子ではなく息子のセーターを着た人形だった。
そこでハナの罠だと気づき、「息子がいるから死ねない」と命乞いをするが、「私の小さな弟は誰が殺したの」と岩を投げつけられて殺される。
…かに見えたが、ハナはサチを殺せず、命拾いしたサチは「息子に恥ずかしくない人間に生まれ変わろう」と号泣しながら決意する(ここまで第4話)。
息子の進司と2人で新しい生活を始めていたが、ハナへの復讐に燃える敏恵に協力を求められる。サチは断るが、進司を人質にとられ、協力せざるをえなくなる(第13、14話)。
常岡久次(つねおかひさじ)
ハナの女学校時代の担任。
「人の心の美しさは外見にもあらわれる(=ブスは心も醜い)」が持論で、ハナの鞄から生徒や教師の財布が出てきた時も、ろくに調べずハナのやったことにし、退学を言い渡した。
引き揚げ後、夕張で教師をしている。
酒に酔った状態で駅のストーブに顔を突っ込む(直接の描写はないがハナが関与していると思われる)(第6話)。
命は助かったが、顔の火傷は深刻で、失明し、口もきけない状態となる(第8話)。
桐谷ヤエ子(きりたにやえこ)
女学校時代、ハナのいじめグループのメンバーではなかったが、ハナは敏恵に命令されてヤエ子の靴の泥を舐めさせられたことがある。
ハナは当初ヤエ子に対して「復讐してやりたいほど憎しみはない」としていたが、絢子への復讐の邪魔になる存在だとして、ヤエ子を排除する機会をうかがう(第7話)。こう書くとハナの復讐に巻き込まれたかわいそうな人という感じがするが、手癖が悪い人物なので、自業自得である。
ヤエ子は引き揚げ後、服作りの職につくことを目指し室蘭の縫製学校に通っていたが、父親が脳卒中で右半身不随になり、仕送りができなくなったとして学校を辞めざるをえなくなる。母親には「根室に帰ってきてお父さんの看病を手伝って」と言われるが、根室には帰らず室蘭の水産加工の工場で働く。
食べるのがやっとで大好きなおしゃれもできず、「こんな生活は私にふさわしくない」と鬱々とした日々を過ごすが、ある日大金が入った財布を拾い、それをネコババして思いきり服を買い込む。
その後、お金と服がある幸せに憑りつかれ、金目のものを狙って空き巣をはたらくようになる。
ヤエ子は婚約者との会食があるとのことで、デパートで新しいドレスを購入。その時ハナが近づき、「素敵な服だけど首元があいてるからネックレスあったらいいね。翡翠とかね」と助言(ハナはヤエ子が翡翠のネックレスを盗むところを見ていた)。
前日に空き巣で盗んだ翡翠のネックレスをつけて会食に出席するヤエ子。
そこにネックレスの持ち主であるおばあさんが警察を連れて登場し、ヤエ子はその場で逮捕される。
おばあさんにヤエ子のことを教えたのはハナ。
その後、ヤエ子は拘置所内で首をつって死亡(ここまで第8話)。
高島津絢子(たかしまづあやこ)
女学校時代、ハナをいじめていたグループのリーダー格。製紙会社を経営する一族・高島津家の令嬢。この物語のラスボス。
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