『間違いで求婚された女は一年後離縁される』のネタバレ含む感想を書いていくわけですが、どういった話なのかはタイトルで説明されています。親切なタイトル。
最近、「話の内容を一言でまとめました」みたいなタイトル多いよね。もはやそれあらすじじゃね?みたいなタイトルね。
あらすじタイトルは、タイトルだけで話の内容がわかるところがいいところ。『もやしもん』とか『おやすみプンプン』とかって、タイトルだけじゃなんの話か全然わからんもんね。『おやすみプンプン』なんて、タイトルだけじゃ絵本かな?ってなるし。
ただ、あらすじタイトルは「このタイトルこういう意味だったのか!」っていう驚きがないところが欠点だと思う。
最近だと、『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』や『進撃の巨人』で「タイトルそういう意味だったのね!」って良い驚きがあったし、昔だと『リング』ね。貞子のやつ。『リング』の意味がわかったとき「そういうことか!」ってなったし。いわゆる”タイトル回収“がないところが、あらすじタイトルの欠点よね。
話を戻しまして、『間違いで求婚された女は一年後離縁される』の感想について。※ネタバレ注意
内容は、タイトルにあるとおり、ヒロインであるシェリルが求婚されて、ウキウキして嫁ぎ先にむかったら、結婚相手に「お前は誰だ!?」とかって言われちゃって。
ヒロインの結婚相手は、ヒロインの妹に求婚したつもりだったらしく、でも結婚は成立してしまっていて、この世界では結婚して1年たたないと離婚できない決まりになっているから、1年後に離婚する約束をさせられるっていう話。
いやひどすぎん?
まぁ最後はハッピーエンドですけども。「終わりよければすべてよし」…じゃねぇわ!って言いたくなるくらい、始まり方ひどくない?
ヒロインはさ、生母は亡くなっていて、継母と腹違いの妹にはイジメられて、実の父親には愛されず、貴族なのに使用人みたいな生活をさせられていて、「私は誰からも必要とされない人間」だと思って生きてたのよ。
言ってしまえば愛情に飢えてて、そんな時に、手紙で名指しでの求婚を受けて、「この私を見初めてくれた方がいる」って、「愛し愛される生活」に憧れて心躍らせながら嫁ぎ先までむかったわけ。
そして結婚相手の伯爵に初めて対面したときに、言われた言葉が「お前は誰だ」。もうビックリするよね。「いやお前に名指しで求婚されたんだが?」ってなる。
伯爵は伯爵で、ヒロインに求婚するつもりはまったくなくて、本当の求婚相手はヒロインの妹だったんですよ。
なぜ求婚相手を間違えたかというと、伯爵がヒロイン妹に初めて会った時に、めっちゃ美人なヒロイン妹に一目惚れ。そして名前を聞いたところ、ヒロイン妹が勝手に、姉であるヒロインの名「シェリル」を名乗ったらしい(妹の名前は「リリア」)。
その際、ヒロイン妹がヒロインのことを「とんでもない男好きで、毎夜寝所に男を連れ込んでいる」と伯爵に話したために、伯爵は初対面のヒロインのことをめちゃめちゃ毛嫌いすんの。
…わざわざ説明しなくてもうすうす察してると思いますが、実際にとんでもない男好きなのはヒロイン妹の方で、ヒロインは男性経験どころか、お付き合いした経験もない。
ヒロインが反論しようとしても、聞く耳持たずの伯爵。「こんな尻軽女と1年間だけとはいえ夫婦だなんて虫唾が走る」とか言って、ヒロインと一切関わろうとしないの。
この時点で、伯爵に対する私の印象は最悪ですよ。
だってさ、伯爵が持つヒロインの印象って、ヒロイン妹のウソの話と、ヒロイン妹が悪意を持って広めた「男好き」っていう噂だけの情報よ。
噂だけで人の印象決めるって愚かすぎない?10代とか20前半とかだったら「まぁ若いからねぇ…」っても言えるけど、この伯爵、30歳だからね。
30歳でその判断基準、大丈夫?って思う。
30歳の伯爵が、20歳の令嬢に間違って求婚して結婚して、仮にも自分の妻となった10も年下の女の子に噂だけで尻軽と決めつけ、離婚をつきつけるという鬼畜の所業。
ヒロインにとってまだ救われたことは、伯爵家の使用人たちが皆いい人で、ヒロインをいじめたり嫌がらせをしなかったこと。
特にね、65歳の伯爵家家令(執事みたいな)、テリーさんって人がいい人でね。ヒロインのことを「噂されている様な奔放な女性とは思えない」って、ヒロインの様子を自分の目で見て判断すんの。そして常に一人でいるヒロインに声をかけて、ヒロインの心の支えみたいな感じになるのよ。
もうこの作品のヒーロー、伯爵じゃなくてテリーさんでいいんじゃね?ってなるから。伯爵には「30にもなって噂だけで人を判断するな」と小一時間。
まぁなんやかんやね、伯爵はヒロインの本当の心の美しさに気付いてヒロインに惚れるし、ヒロインも伯爵に好意を持ってて両片想いになってね。
すぐ結ばれるかと思いきや、伯爵「彼女(ヒロイン)を傷つけてしまった俺には彼女と一緒になる資格はない」つって、「ヒロインの幸せのために」予定通り離婚はするって決めちゃう。「彼女にふさわしい男を探すから」っつって。
伯爵いい加減にしろ。
伯爵がヒロインに告白すれば万事解決のところ、「ヒロインのために」告白しないと決めるヘタレ伯爵。
家族にずっといじめられてきて、元々気が弱いヒロインが、最初に「私の名を呼ぶな」「近づくな」と強い拒否をされた相手に告白してくると思うのか?伯爵お前が動かなければ話が進まないんだが!?と思いながら読んでました。
これはもう好みの話なんだけど、恋愛作品において、ヒーローの立ち位置にいながら、「ヒロインのためを思って」とか理由つけて何も行動しない男、嫌いなんですよね。
「俺と一緒にいない方が君のためかもしれないけど、君と一緒にいると俺が幸せだから俺といてほしい」くらいの人が好き。
よくあるじゃん?「君のために別れたほうがいいんだ」って言ったら、「私の幸せを勝手に決めないでよ!」って返されるやつ。ほんとそれ。少なくともさ、聞いてほしくない?「君にとっては別れた方がいいんだろうけど、俺はほんとは別れたくない。君はどっちが幸せ?」くらいはさ。
決めつけってよくないよね。
だから伯爵もさ、「噂を鵜呑みにして君を傷つけてしまったけど、君と過ごして好きになりました。よければ離婚せず、本当の夫婦になりたい。君が嫌だというなら、もちろんその意思を尊重する」くらいさっさと言えばよかったのよ。
なんだかんだ、思いは通じて2人は本当の夫婦になれたんですけどね。
その後の事件として、ヒロイン妹が襲来。このヒロイン妹のクズっぷりは見ものだし、ヒロイン妹の末路はザマァ。そして最後の最後、ヒロイン父もザマァ。
全体の感想としては、「おい伯爵30歳なんだからしっかりしろ!」なんだけど、クズな人間はちゃんとそれなりの因果応報があったのでスカっとする作品です。
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